日本刀の刀身は時間をかけて職人たちにより研ぎ澄まされ、鋭い切れ味とともに美しい地肌や波紋が現れると言います。現代において大量生産されるモノとの大きな違いは、この世にまったく同じ日本刀は存在しないことがあげられるでしょう。
砂鉄を原料とする日本刀は、低温の炉で溶かすことによって良質な鋼(はがね)を取り出しながら、柔らかい鋼、硬い鋼を刀身の適材適所に刀工たちが使い分けを行っていくとされております。硬さの異なる鋼をうまく組み合わせながら、熱したり冷ましたりを繰り返すなかで、刀工の師匠と弟子が金槌で刀身を叩き合う作業が行われるようです。
このような作業のなかで生まれたことばが「相鎚(あいづち)」として現代でも多くの人びとに使われております。日本刀は膨大な時間と手間をかけてできあがる鍛錬と研磨の芸術品であるとも言われているようです。日本刀の美しさは刀身の刃文や模様にもありますが、その他にも刀身に装飾される拵えの細工などにも日本人の美意識が垣間見られます。
日本刀は、その姿の美しさに加え機能美として無駄なものいっさいが削がれたような、研ぎ澄まされた美しさがあるとされております。世界中の刀剣を集めたなかでも日本刀の独自の美は、多くの人びとの内面に語りかけてくるものがあるようです。
日本刀をはじめとする日本のモノづくりの伝統は、長い歴史のなかで職人たちが磨く技術とともに日本人としての美意識が伝承されているようです。